ムスメ(日本のメイド)選曲集

表題紙
出版年 1911
著者 ヘンリー・マーセラス・ヒッグス
出版地 ロンドン
言語 英語
イギリス
分類 楽譜

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解説

 本作《ムスメ(日本のメイド)選曲集》は、歌劇「ムスメ(日本のメイド)」の劇中歌から、とりわけ人気のあった13曲(序曲を含めると14曲)を抜粋して作られたピアノメドレーです。ピアノ曲へのアレンジを担当したのは、作曲家兼オルガニストとして活躍していたヘンリー・マーセラス・ヒッグス(1855~1929)。当時ヒッグスは56歳、編曲者としても脂がのった壮年期に取りくんだ一作です。
 《ムスメ(日本のメイド)選曲集》のもととなった三幕の歌劇「ムスメ」は1911年、当時ミュージカル音楽作曲家として名を馳せていたハワード・タルボット(1865~1928)とライオネル・モンクトン(1861~1924)が共同で作曲を手掛けることにより誕生しました。ロンドンのシャフツベリー劇場での初演後、合計209回の公演を記録した同歌劇は、同じくジャポニスム歌劇として一大ムーブメントを巻き起こした「ミカド」や「ゲイシャ」に負けずとも劣らない人気を博しました。
 歌劇「ムスメ」は、愛する男性の借金を返済するため、自ら芸者屋に身を投じた一人の娘ハナを軸にドタバタ人間模様が描かれたコメディ作品です。クライマックスでは地震の描写も投じられ、そのスペクタクルな迫力に聴衆は驚嘆したとされています。また、同歌劇には軍人の大久保大将、山木大尉、藤原大尉、伊藤中尉、真敬中尉、さらにジャーナリストの田中、茶屋の主人橋本など、極めて現実的な名前が登場し、「ミカド」や「ゲイシャ」など19世紀末に発表された歌劇と異なり、リアリズムの傾向が増している点も特徴的です。
 さて、今回ご紹介する《ムスメ選曲集》は、〈序曲〉に始まり〈誉れ高き日本の花嫁(タルボット作曲)〉〈お寺の鐘(モンクトン作曲)〉〈私の三味線(タルボット作曲)〉〈日本の小さき花(モンクトン作曲)〉〈幼き日本のおかあさん(モンクトン作曲)〉〈やる気のない紳士(タルボット作曲)〉〈かくれんぼ(タルボット作曲)〉〈バンザイ バンザイ(モンクトン作曲)〉〈世間知らずな私(モンクトン作曲)〉〈トキ オキ オにて(タルボット作曲)〉〈西洋ダンス(タルボット作曲)〉〈第2幕のデュエット(タルボット作曲)〉〈第3幕のオープニングコーラス(タルボット作曲)〉〈あぁ、桜よ(タルボット作曲)〉という13種の劇中歌が、ピアノ独奏曲として連なっています。各曲は、同時代のロマン派オペラを思わせるような優美さを持ち合わせつつ、庶民的な題材と美しいメロディを調和させた親しみやすい内容になっています。編曲者のヒッグスは各曲の緩急を見極め、原曲のイメージを忠実に再現しつつ、バランスの良い一作にまとめています。

(執筆:光平有希)

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