地球・天体図

制作年 1720
制作者 ホーマン
出版地 ニュルンベルク
言語 ラテン語
ドイツ
分類 世界図

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解説

 この地図の制作者であるホーマン(Johann Baptist Homann, 1664-1724)は、18世紀のドイツを代表する地図制作者で、1715年には時の神聖ローマ皇帝であるカール五世から帝国地理学者の称号を得ています。ホーマンは1702年に自身の印刷所を設立しましたが、この工房は息子(Christoph Homann, 1703-1730)に引き継がれ、その後も縁者によって名前を変えながら存続し、18世紀半ばまでドイツを代表する地図製作工房としての地位を保ちました。ホーマンが製作した地図帳で最も有名な作品は、『全世界の大アトラス(Grosse Atlas ueber die ganze Welt. 1716)』ですが、それ以外にも多くの有名な地図を残しました。  本図は、西半球と東半球との二つを描く世界地図で、当時の世界地図の様式としてよく見られるものです。中心部には北半球と南半球の天界図がそれぞれ描かれています。地図の下部の左右には世界の様々な自然現象が描かれており、火山活動や潮の干満、虹や渦巻きなどが描かれるとともに、ラテン語のテキストでも簡単に説明されています。
 世界図は当時のヨーロッパが得ていた地理情報と世界観を反映しており、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカの四つの地域に分けて彩色が施されています。まだ未解明であった北海道については極めて不完全な姿で描かれており、カムチャッカと蝦夷が同じ巨大な半島として登場しています。また、NOVA HOLLANDIAとされているオーストラリアは、まだその輪郭が西海岸の一部しか明らかでなく、ニュージランドの輪郭と合わせて、巨大な大陸として描かれています。この地域はタスマン(Abel Janszoon Tasman, 1603-1659)による1642年から1644年にかけて行われた二度の航海によって初めて明らかにされたもので、地図中には彼の航路が有名なマゼラン(Fernão de Magalhães, 1480-1521)のそれと共に描かれています。北米では、当時カリフォルニアが島であるのか半島であるのかについての論争がいまだに続いていましたが、ホーマンはこの地図では半島として描いています。1710年ごろにホーマンは、本図とほぼ同じ地図を刊行していますが、その際にはカリフォルニアは島として描かれていましたので、アメリカで布教を行ったキノ(Eusebio Francisco Kino, 1644-1711)による報告を受けて、本図においては修正したものと思われます。

(執筆:羽田孝之)