近世期絵入百科事典データベース;Database of Early Modern Illustrated Encyclopedias

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書名
『訓蒙図彙』
刊年・成立年
寛文6年(1666)序
作者・絵師など
中村惕斎(編)
版元
山形屋
書型・冊数
大本20巻14冊
所蔵
国立国会図書館蔵(117-18)
解題
江戸前期の儒学者中村惕斎(1629-1702)による絵入百科事典。天文から花草まで20巻17部門1474項目を収載。一つの項目につき、絵と名称を対応させて記す。名称は、和名・漢名・異称・俗称など複数を挙げている。本書をなすにあたって、『三才図会』『農政全書』『本草綱目』などの漢籍、『和名類聚抄』『多識編』『字鏡』『壒嚢鈔』『下学集』などの和書を典拠としている。本書の刊行以降、寛文8年(1668)、寛文9~元禄5年(1669~1692)に配列に異同のある縮刷版が出され、元禄8年(1695)には『頭書増補/訓蒙図彙』、寛政元年(1789)には『頭書増補/訓蒙図彙大成』が刊行されるなど、近世期を通じて長く受容された。なお、惕斎が関わっているのは寛文6年序版のみである。
書名
『女用訓蒙図彙』
刊年・成立年
貞享4年(1687)/国会本は刊年未詳
作者・絵師など
奥田松柏軒(編)、吉田半兵衛(画)
版元
万屋清兵衛
書型・冊数
半紙本5巻5冊
所蔵
国立国会図書館蔵(京乙-243)
解題
女性風俗に特化した訓蒙図彙。内容は、女子用の家具・器物・道具、行儀作法、紋づくし、髪型、帯、小袖雛形、折り方・包み方の図解、薬の調合、占いなどである。巻一は「訓蒙図彙」にならって絵と名称を並べたものだが、巻二以降は文章のみや小袖雛形本形式など様々であり、巻毎にレイアウトのデザインは異なる。なお、諸本として貞享4年(1687)版と巻三の・巻五の内容を若干改変した元禄元年(1688)版があるが、底本とした国会本は元禄元年版の改変を引き継いだ内容である。刊記には「十一月吉日 江戸日本橋万町 万屋清兵衛」とあり、刊年は記されていない。
(参考文献:小池三枝「女用訓蒙図彙」『日本古典文学大辞典』岩波書店、1984)
書名
『百人女郎品定』
刊年・成立年
享保8年(1723)
作者・絵師など
西川祐信(画)
版元
八文字屋
書型・冊数
大本2巻2冊(国会本は1冊に合綴)
所蔵
国立国会図書館蔵(寄別5-6-4-1)
解題
当世の女性の職業・属性を百種に分け、名称と共に記した人物百科事典的絵本。上・下二巻で、女帝から大名の姫君、医者、下女、太夫、夜鷹など、あらゆる身分・職業を描く。祐信・八文字屋は本書以前にも、人物を階層ごとに分けて描く趣向の艶本『色ひいな形』(宝永8年/1711)・『情ひな形』(正徳2年/1712)、雛形本『正徳ひな形』(正徳3年/1713)・『西川ひな形』(享保5年/1720)・『享保ひな形』(享保年間)を刊行しており、本書はテーマを「女性」に特化して発展させたもの。
書名
『泰西訓蒙図解』
刊年・成立年
明治4年(1871)
作者・絵師など
田中芳男(訳)、内田晋斎(校)
版元
文部省
書型・冊数
2巻2冊
所蔵
国立国会図書館蔵(特42-506)
解題
文科省によって刊行された外国語の絵入単語辞典。植物・博物学者である田中芳男(1838-1916)の翻訳による。慶応3年(1867)、田中はパリ万国博覧会に参加するために渡仏した際、英仏の両語を付した絵入本を購入した。それを翻訳・補訂したもの。原本の英語・フランス語にドイツ語を増補し、さらに和漢の訳語を付けた。家屋・屋財・家具・食器など全22部門385項目。
書名
『頭書増補訓蒙図彙』
刊年・成立年
元禄8年(1695)序
作者・絵師など
未詳
版元
未詳
書型・冊数
半紙本21巻8冊
所蔵
国立国会図書館蔵(特1-1940)
解題
全1724項目。「頭書増補」と冠に付けた通り、寛文6年版の各図上部に注釈文が加えられ、各部門にも追加項目がある。また、これまでの二十巻に加えて「雑類」一巻も加わっており、全体の項目数は240ほど増えた。注釈文は漢字ひらがな交じりで記され、より平易な書物となっている。京都の本屋仲間の記録「済帳標目」に本書が無許可の重版本が記されている点や、叙末に「暢斎識ス」とある点から、惕斎が編集に関与していた可能性は低い。(参考文献:勝又基「解題『頭書増補訓蒙図彙』」『江戸時代図説百科訓蒙図彙の世界』大空社、2002、小林祥次郎『江戸のイラスト辞典訓蒙図彙』勉誠出版、2012)
書名
『頭書増補訓蒙図彙大成』
刊年・成立年
寛政元年(1789)
作者・絵師など
下河辺拾水(画)
版元
村上勘兵衛、出雲寺文治郎、今井七郎兵衛、額田正三郎、勝村治右衛門、泉太兵衛、小川太左衛門、小川源兵衛、谷口勘三郎
書型・冊数
半紙本21巻10冊
所蔵
国際日本文化研究センター(UM/87/Na)
解題
全1763項目。惕斎の叙に加えて、力丸光の序文、春荘の跋文がある。図は京都の浮世絵師下河辺拾水が描き、京都の版元九皐堂(谷口勘三郎)から刊行された。
寛政版は寛文6年版ではなく、元禄版を基にしている。項目数を比較すると「畜獣」が減り、「雑類」が大幅に増えている。本書は元禄版から約100年後の刊行であるが、その間に発展した博物学・本草学・医学などの影響を踏まえ、情報が更新されている項目もある。
寛文版・元禄版では項目毎に枠線を引いて見開き4図あるいは見開き8図・12図でレイアウトしていたが、寛政版では図を大きく配置する構成に変え、個別に書かれていた事物の図と名称を見開き1図の中に組み合わせる。
書名
『好色訓蒙図彙』
刊年・成立年
貞享3年(1686)
作者・絵師など
無色軒三白居士(作)、吉田半兵衛(画)
版元
銅駝坊三右衛門、高辻昌陽軒
書型・冊数
小本3巻3冊
所蔵
国際日本文化研究センター(KC/172/Yo)
解題
寛文6年序『訓蒙図彙』以降、分類方法や形式を踏襲し、書名に「訓蒙図彙」を付けた「訓蒙図彙もの」が様々に出版された。貞享3年『好色訓蒙図彙』もその一つで、『訓蒙図彙』では扱われなかった「好色的事象」を主題として、性道具や階級毎の性風俗を分類して図解している。「天象」「地儀」「人倫」「人支」「衆道意気智界」「器財」「女道濡界」の7部門、169項目。
書名
『人倫訓蒙図彙』
刊年・成立年
元禄3年(1690)
作者・絵師など
蒔絵師源三郎(画)
版元
平楽寺、村上清三郎、村上五郎兵衛
書型・冊数
半紙本7巻7冊
所蔵
国立国会図書館(寄別13-58)
解題
序文に「上尊き公卿より庶人の賎きにいたるまでの其所作を詳しく、家々に尋ねて来由をただし、或は唐大和の書にあるを考え集め」とあるように、本書は多様な人物の風俗や由来を人に聞き、和漢の書を調べて属性ごとに分類・図解したもの。この編纂方法は寛文6年(1666)序『訓蒙図彙』を踏襲するものである。公家からはじまり、武家、僧侶、商人、細工人、遊廓、芸能、勧進類まで約500種の階層・職業が収録されている。
書名
『能之訓蒙図彙』
刊年・成立年
貞享4年(1687)
作者・絵師など
未詳
版元
伊勢屋七郎兵衛、吉田次郎右衛門
書型・冊数
横本4巻4冊
所蔵
国立国会図書館(京-332)
解題
全121項目。能楽に関する事物を収載した書物。巻一は舞台図・面図・名寄・衣裳、巻二は小道具・江戸四座の役者名簿、巻三は謡曲の目録、巻四は京都の能役者の名簿・諸職の名匠一覧。宝暦10年(1760)に改訂版である『改正能訓蒙図彙』が出版された。掲載された情報は貞享年間当時の実態を正確に記録していると評価されており、元禄10年(1697)『能之図式』など能の解説書に大きな影響を与えた。
書名
『博物新編』
刊年・成立年
明治7年(1874)
作者・絵師など
ベンジャミン・ホブソン(合信)(原著)
版元
萬屋兵四郎
書型・冊数
半紙本3冊
所蔵
国文学研究資料館(ヤ9-422-1)
解題
全193項目。イギリス人宣教師であるホブソンが中国語で記した自然科学の入門書の和刻本。物理学、化学、天文学、動物学に関する科学知識を解説している。原著は中国で1854年に出版された。萬屋平四郎刊行の官板『博物新編』は万延元年(1860)頃に出版され、その後何度も刷られた。明治5年(1872)に同じく萬屋(本名福田)から図・本文ともに新刻した『博物新編再刻』が、明治7年(1874)に再度板木を改めた『博物新編三刻』が出版された。底本は明治7年三刻版。
書名
『西洋訓蒙図彙』
刊年・成立年
明治7年(1874)
作者・絵師など
鳥山啓(編)
版元
啓明社
書型・冊数
1巻1冊
所蔵
国立国会図書館(特38-65)
解題
全73項目。「洋籍」を典拠として万物の図を集め、編纂したもの。現在確認できるのは国立国会図書館蔵の第一集天文地理之部の一冊のみ。ただし凡例を読むとまずこの第一集を出したあと、人物、人事、器用など後の部門を刊行すると述べているので、第二集以降は作られなかった可能性もある。編纂者の鳥山啓は天文学・地理学に通じ、維新後は和歌山で教鞭をとった。和歌山中学時代の教え子には南方熊楠がいる。
書名
『地球産物雑誌』
刊年・成立年
明治5年(1872)
作者・絵師など
コルタンブル(著)、堀川建斎(訳)
版元
和泉屋半兵衛
書型・冊数
1巻1冊
所蔵
国立国会図書館(特38-57)
解題
全34項目。フランス人コルタンブルによる地理書を翻訳し、図を加えたもの。「地球」という書名の通り、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアなど多地域にわたる人種、動物、植物、鉱物を紹介している。翻訳者の堀川建斎は、版元の和泉屋半兵衛自身である。刊記で「西洋書屋 和泉屋半兵衛」と名乗るように、堀川は和泉屋として『西洋雑誌』(慶應3年/1867)など西洋書物の翻訳・出版を行っていた。
書名
『難字訓蒙図彙』
刊年・成立年
貞享2年(1685)
作者・絵師など
永井 如瓶子(編纂)、菱川師宣(画)
版元
泉屋喜太郎
書型・冊数
5巻1冊
所蔵
国文学研究資料館(96-285)
解題
全451項目。乾坤、時候、神祇、人倫、気形、支体、草木、衣食、器財、居宅、彩色、言語の全12部門。天和2年(1682)刊『邇言便蒙抄(じげんべんもうしょう)』の内容や書型を改変し、改題したもの。同書は節用集など和漢の辞書・類書を参考にして如瓶子が編纂したもので、事物の異名や故事などをまとめている。『難字訓蒙図彙』は書型を手に取りやすい小本に改め、師宣の挿絵を新たに加えた。なお、底本は貞享2年本だが、この他に貞享4年(1687)本、無刊記本、享保15年(1730)、文政6年(1823)の後印本もある。
書名
『武器皕図』
刊年・成立年
嘉永元年(1848)
作者・絵師など
小林 祐猷(輯)・(画)、山脇 正準(閲)
版元
久留米山口美崇助工、官許講武塾藏板、谷村二同刻
書型・冊数
1冊
所蔵
国文学研究資料館 三井文庫旧蔵資料(MY-1473-3)
解題
弓や銃、刀など古今の武器数百種を集めて図解した幼童向けの書物。小林祐猷の凡例によれば、本書は版本として作っているが、本来はカルタにして子どもの玩物にすることを主眼とする。祐猷は同じく凡例で、実用の武器を主としているため儀式に用いる古器は加えていないこと、実際の武器を見たり、師にたずねて描いたものは正確に写しているが、古画古書や外国の書籍によって摸写したものはその限りではないこと、武器を大まかに分類しているため、種類が異なる武器が混在している箇所もあることなどを記している。 本書は見開きに8項目を配し、名称と図を線で区切って並べる。書名には「皕図」とあり、図の枠数も200だが、一枠のなかに2種類以上の武器が含まれており、実際の種類数は400を軽く超える。全200項目。
書名
『謡訓蒙図会』
刊年・成立年
享和2年(1802)
作者・絵師など
中村三近子(編)、橘守国(画)
版元
生島小兵衛、額田正三郎、額田庄兵衛、勝村治右衛門、今井喜兵衛、今井七郎兵衛、小川五兵衛
書型・冊数
半紙本10冊
所蔵
国立国会図書館(京乙-234)
解題
享保17年(1732)刊『謡曲画誌』の改題本。「高砂」から「融」まで各巻五曲、計五十曲の謡曲について挿絵と解説を付ける。奥書に「右本者以観世左近太夫正本考之而撰書図文義者也」とあるように、観世流正本を典拠としている。
書名
『戯場楽屋図会』
刊年・成立年
正編寛政13年(1801)※奥付は寛政12年
作者・絵師など
松好斎半兵衛(著)(画)
版元
河内屋太助、八文字屋八左衛門
書型・冊数
大本2冊
所蔵
国立国会図書館(863-216)
解題
大坂の絵師・松好斎による大坂の歌舞伎にまつわる図解書。劇場で働く人々やその生活、建物、道具などを詳細に記録する。床山や衣裳といった裏方や、せり上げのような舞台機構を解説する劇場内部の事項に加えて、役者の紋や俳名、芝居茶屋の暖簾なども列記する。享和3年(1802)冬、または同4年春には、浄瑠璃に重きを置いた拾遺2冊が出版されている。
書名
『花鳥写真図彙』
刊年・成立年
初編文化2年(1805)、二編文政10年(1827)
作者・絵師など
北尾重政(画)
版元
和泉屋市兵衛、柏原屋清右衛門、岡田屋嘉七
書型・冊数
半紙本初編・二編各巻3冊
所蔵
国立国会図書館(わ-40)
解題
草花と鳥を組合せた図にそれぞれの名称を記した絵本。解説文はなく、見開き一図に序文に草花一種、鳥一種を大きく描く。「頃摸写乎所其楽作一帖名曰花鳥真図彙」とあり、様々な絵手本・画譜を摸写して本書を構成している。色摺で鮮やかに花と鳥を表現する。
書名
『万国通商往来』
刊年・成立年
明治6年(1873)
作者・絵師など
河村貞山(白厳)(著)
版元
佐々木惣四郎、吉川半七、鈴木忠勝、松村九兵衛、書林会社、松本彦太郎、千秋与八、杉本甚助
書型・冊数
半紙本1冊
所蔵
国立国会図書館(W335-39)
解題
「頭書挿絵」と角書にある通り、頭書部分に海外の器物、乗り物、植物、都市などの名称と図が記される。著者の河村貞山は本書の他にも『童蒙必読/新聴用往来』(明治6年)、『地学窮理往来』(明治7年)といった往来物を手がけている。
書名
『戯場節用集』
刊年・成立年
享和元年(1801)
作者・絵師など
好文舎青氏(著)、竹原雲峰(画)、兎鹿斎主人(筆耕)、酒屋隣馬宥(校合)
版元
扇屋利助、鶴屋喜右衛門、鈆屋安兵衛
書型・冊数
1冊
所蔵
国立国会図書館(京-39)
解題
「三ヶ津戯場図」「人倫之図」「万積物図」「俳名一覧」など歌舞伎芝居に関する32の事項を節用集形式や指南書の形式になぞらえてまとめた書物。主要書肆が大坂の扇屋ということもあり、上方に関する情報がより詳細である。
書名
『和談三細図会』
刊年・成立年
天保13年(1802)
作者・絵師など
暁鐘成(作)
版元
塩屋喜兵衛、河内屋政七
書型・冊数
1冊
所蔵
大阪大学附属図書館忍頂寺文庫(228-15-13)
解題
文政4年(1732)刊『無飽三財図会』初編の後続本にあたる書物。青楼の事物を天地人の三才にこじつけた滑稽本。初篇である本書では「天部」を扱い、青楼の遊女や客、働く人々を「日」や「太白」、「牽牛」などになぞらえる。巻末で「二編 出来」と記すが、伝存しているのは初篇のみ。
書名
『増補諸宗/仏像図彙』
刊年・成立年
寛政8年(1796)
作者・絵師など
土佐秀信(画)
版元
大文字屋与三兵衛
書型・冊数
半紙本5巻5冊
所蔵
国立公文書館(193-0381)
解題
全826項目。様々な仏像や天神像を図解したもの。後半部では、各仏像が所持する器物・法具類を取り上げる。本書には土佐秀信による序文があり、元禄3年(1690)に刊行された『仏像図彙』を秀信が増補したと記されている。ただし、『増補諸宗/仏像図彙』には天明3年(1783)の序年誌がある天明3年版があり、本書はその板木を流用して寛政8年に大文字屋から刊行されたもの。
(参考文献:木越治「増補仏像図彙」『訓蒙図彙集成別巻:江戸時代図説百科 訓蒙図彙の世界』大空社、2002)
書名
『武具訓蒙図彙』
刊年・成立年
貞享元年(1684)
作者・絵師など
湯浅得之(編)
版元
増田庄左衛門、永田長兵衛、八尾市兵衛、川合四郎兵衛
書型・冊数
大本4巻5冊
所蔵
早稲田大学図書館(ケ05 00636)
解題
全359項目。具足など、武具を網羅して分類し、名称だけでなく個別の解説も付している。作者は京都に住む和算学者の湯浅得之〈とくし〉で、京都と大坂の版元から刊行された。巻之一は甲(兜)、巻之二以降は鎧、手甲、具足、武器などが並ぶ。中でも充実しているのが甲の種類で、巻之一に百十一種を載せている。
(参考文献:石上阿希『江戸のことば絵事典『訓蒙図彙』の世界』KADOKAWA、2021)
書名
『暗夜訓蒙図彙』
刊年・成立年
宝暦9年(1759)
作者・絵師など
百草舎芝立(編)
版元
万屋弥市、小川彦九郎
書型・冊数
大本1冊
所蔵
早稲田大学図書館(ヘ05 06066)
解題
全68項目。吉原を詠んだ句を天文などに分類した俳書。吉原風俗をそれぞれ項目立てし、名称と図に吉原を呼んだ発句を添えている。本書の部門立は、天文・地理・居処・人物・衣服・器用・禽獣・草樹の八つ。「草樹」以外は『訓蒙図彙』の部門の名称と同じである。各部門の扉や項目のレイアウトデザインを見比べると、元禄8年(1695)版ではなく寛文6年(1666)版を典拠としていることがわかる。
(参考文献:石上阿希『江戸のことば絵事典『訓蒙図彙』の世界』KADOKAWA、2021)
書名
『唐土訓蒙図彙』
刊年・成立年
享和2年(1802)/初版は享保4年(1719)刊
作者・絵師など
平住専庵(撰)、橘有税(橘守国)(画)
版元
河内屋吉兵衛、小刀屋六兵衛、河内屋喜兵衛、河内屋太助
書型・冊数
半紙本14巻15冊
所蔵
国際日本文化研究センター(UR/1/Hi)
解題
全1771項目。中国の事物を集めた絵入百科事典。『訓蒙図彙』は和漢の事物を取り上げた書物だが、本書はそこに採用されなかったものから「漢事」を中心に補ったと序文に記している。部門立は、天文、地理、宮室、人物、人事、器用、草木、禽獣、魚介虫の九つだが、器用を「衣服」「農具」「船車」などに分けるなど、部門によってはさらに細かく分類を行っている。初版は須原茂兵衛・大野木市兵衛刊行享保4年版、諸本に享和2年版(底本)、嘉永7年(1854)版、小川多左衛門刊寛政8年(1796)版がある。
(参考文献:倉島利仁「唐土訓蒙図彙」『訓蒙図彙集成別巻:江戸時代図説百科 訓蒙図彙の世界』大空社、2002)
書名
『廻国奇観(Amoenitatum Exoticarum)』
刊年・成立年
1712年
作者・絵師など
エンゲルベルト・ケンペル(Engelbert Kaempfer)
版元
Typis & Impensis Henrici Wilhelmi Meyeri, Aulæ Lippiacæ Typographi
書型・冊数
1冊
所蔵
国際日本文化研究センター(DS/7/Ka)
解題
ドイツ人医師であっエンゲルベルト・ケンペル(1651-1716)は、東インド会社の船医として1960年(元禄3)9月から1692年(同5)10月にかけて日本に滞在した。ケンペルは帰国後、2年間の滞在中に見聞したこと、また入手した書物などをもとに日本に関する記事や本をまとめ、本書や『日本誌』を著した。第五編は日本植物誌となっている。また、鍼灸についての項目もある。
書名
『日本誌(The history of Japan)』
刊年・成立年
1727年
作者・絵師など
エンゲルベルト・ケンペル(Engelbert Kaempfer)
版元
London : Printed for the translator
書型・冊数
1冊
所蔵
国際日本文化研究センター(DS/835/Ka)
解題
本書はもともとドイツ語で書かれたものだが、ケンペルの死後、遺稿をもとに1727年に英語版が刊行され、その後1929、1932年にフランス語版、1729、1933年にオランダ語版、1777~1779年にドイツ語版と数カ国語で翻訳されヨーロッパの国々へ広まり、日本研究の基礎文献となった。動物や虫の図は『訓蒙図彙』を参考にしている。
書名
『偶言三歳智恵』
刊年・成立年
寛永3年(1850)以降
作者・絵師など
暁鐘成(編)(画)
版元
東都書林 加乱堂
書型・冊数
半紙本3巻3冊
所蔵
国際日本文化研究センター(KC/172/Ak)
解題
本書は『和漢三才図会』をパロディ化した滑稽本『無飽三財図会』(初編弘化4年[1846]刊、二編嘉永4年[1850]刊)をさらに艶本化したもの。天地人の事物を天文、地理、虫、魚、人物、鳥、獣に分けて男女にまつわる事物を図解している。
書名
『和談三才図笑』
刊年・成立年
明治6年(1873)
作者・絵師など
万亭応賀(著)、河鍋暁斎(画)
版元
仙鶴堂(小林喜右衛門)
書型・冊数
半紙本1冊
所蔵
国際日本文化研究センター(KG/237/Ma)
解題
『和漢三才図会』にならって森羅万象の名目に様々な人物をなぞらえて図解した滑稽本。ただし、旧来の書物のもじりに加えて「方今開化に古説を省く発明究理感当の書を閲すれば再考して」うがち、こじつけ、地口を尽くして笑いにかえている。「地球の水かけ論」から始まり、天の部、時候の部、人倫の部、鳥類の部、虫類の部から成る。底本は一の巻のみ。
書名
『無飽三財図会』
刊年・成立年
初編文政4年(1821)序・自跋、弘化4年(1846)刊、二編嘉永3年(1850)刊
作者・絵師など
暁鐘成(作)(画)
版元
河内屋平七、丁子屋平兵衛、桝屋勘兵衛、丸屋善兵衛
書型・冊数
半紙本2編6巻6冊
所蔵
国際日本文化研究センター(KG/237/Ak)
解題
寺島良安の『和漢三才図会』(正徳2年[1712]序、同5年[1715]跋)を戯作化した滑稽本。書名については凡例で「無飽三財図会トハ遊客昼夜散財ナストイヘ共飽事無ガ故ニ斯題ス」と説明するように、本書が遊廓で散財する人々を百科事典の形式にならって天地人の三才に分類し、図解する書物であることを示したもの。