日本史 全9巻

出版年 1736
著者 シャルヴォア
出版地 パリ
言語 フランス語
フランス
分類 図書

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解説

本書は18世紀に探検家、著述家として活躍したフランスのイエズス会士であるシャルヴォア(Pierre-François-Xavier Charlevoix, 1682 – 1761)による著作です。シャルヴォアは、宣教師として北米各地の探検と宣教活動を行う一方で、著作家としても多くの作品を残しており、本書は彼の主著の一つに数えられている作品です。

シャルヴォアは、本書に先立って1715年に『日本におけるキリスト教の興隆と発展、そして凋落の歴史』という「日本教会史」とも呼ぶべき作品を刊行していました。これは、ザビエルによる日本宣教の開始からその途絶に至るまでの歴史をまとめたもので、本書の基礎となった作品です。同書が刊行された後1727年に、18世紀ヨーロッパにおける日本研究の金字塔ともいうべきケンペル『日本誌』が刊行されており、同書が基本的にプロテスタントの立場から書かれていることに対抗して、本書はカトリックの視点から見た日本の歴史や文化、社会を包括的に論じるために、前書を大幅に増補改訂する形で著されています。

本書は、全20部と複数の附論で構成されています。その第1部(第1巻全て)は、日本概論となっています。その構成はケンペル『日本誌』のそれとよく似ており、地理、気候、行政区分、統治機構、日本の人々の起源、学芸、諸宗教といったトピックが論じられています。ただし、本書における記事は、あくまでシャルヴォアの拠って立つカトリックの視点から記述されていて、その論調はかなり異なっているようです。

第2部から第20部(第2巻〜第7巻)は、いわゆる「日本教会史」として本書の中核をなす部分で、シャルヴォアの前著を大幅に増補改訂したものと言えます。宣教活動を中心にした記述とはいえ、「公方様」(Cubo-sama)、「信長」(Nobunanga)や「羽柴(Faxiba)」「内府様(Dayfu-Sama、家康)」「将軍様(Xogun-Sama)」など歴代の日本の為政者たちの名前が至るところに現れ、当時の日本の社会や政治状況も詳しく書かれています。第8巻は第1巻に対する補遺となっています。また、第9巻には参考文献リストの他に、新世界「発見」の通史、そして名詞索引も含まれます。

記事中ではケンペル『日本誌』の記述に反駁していることも多く、随所でシャルヴォアの自説が唱えられています。シャルヴォアの記述は誤りも多いことがわかっていますが、できる限り典拠を示した上で記述しようとする真摯な姿勢も見られ、第9巻には彼が用いた参考文献のリストが60ページにもわたって掲載されています。ただし、本書に数多くの掲載されている図版は、想像で描かれた安土城図とその城下町の図などいくつかの例外を除いて、基本的にケンペル『日本誌』や他の著作の収録図を転載しています。

本書は特にカトリック圏を中心によく読まれ、1754年には増補改訂版が出されています。シャルヴォアの著作は長く読み継がれ、開国前後に至るまで同圏における日本観の形成に多大な影響を与えました。なお、当センターが所蔵するのは、小型の十二折り判で全9冊となっていますが、より大きな四つ折り判の全2冊版も同年に刊行されています。

   (執筆:羽田孝之)

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