ライブラリー図書
日本国誌
解説
ヴァレニウスは1622年にドイツで生まれ、ライデン大学で医学を学んだ後、アムステルダムで地理学の研究に没頭しました。そこで、世界各地の地理学シリーズを計画していたエルゼビア社のために『日本国誌』を著します。本書は、ヨーロッパの広い範囲の知識人を対象とし、ラテン語で書かれていました。ヴァレニウスは日本に行ったことがないものの、当時の日本に関する一次資料における日本の地理や文化に関する記述を分かりやすく主題ごとに集成しています。
ヴァレニウスは、当時として新しい日本情報であったフランソワ・カロンの『日本大王国志』からの引用を中心としながら、フランシスコ・ザビエルをはじめとする16世紀のイエズス会士の諸報告のほか、ヤン・ハイヘン・ヴァン・リンスホーテン『東方案内記』も参照しています。イエズス会士は16世紀において日本で自由に動くことができ、日本人と親密な関係をもっていたため、日本人の生活や性格について多くの生の情報を、書簡を通じてヨーロッパに送っていました。リンスホーテンの『東方案内記』にも、僅かながら日本の日常に関する情報が掲載されています。ヴァレニウスの著作は、以上の諸資料における様々な情報をテーマごとに整理し、参照しやすい形でヨーロッパの知識人に提供したものです。
(執筆:フレデリック・クレインス)
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