日本

出版年 1830
著者 メイラン
出版地 アムステルダム
言語 オランダ語
オランダ
分類 オランダ商館

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解説

 本書の著者であるメイラン(Germain Felix Meijlan, 1785-1831)は、1826年から1830年の間、長崎出島のオランダ商館長を務めた人物です。メイランの商館長時代は、日蘭貿易が衰退の傾向にあり、その再建がオランダにとって急務の時代でした。オランダ本国自体が1795年にフランスに併合され、99年には東インド会社が解散しており、メイランは、祖国復興のために日蘭貿易を何とかして再建しなければなりませんでした。また、彼の在任期間中には、いわゆるシーボルト事件が発生しており、メイランはこれを巧みに切り抜けながら、貿易再興策を練りました。
 本書は、メイランが遺した二つの著作のうちの一つで、日本の文化や社会を中心に様々な角度から考察した書物で、若くしてバタフィアで世を去ることになったメイランの晩年1830年にアムステルダムで刊行されています。主にメイランが長崎で実際に見聞した出来事によって著されており、当時のオランダ人から見た日本の姿を知ることができる内容になっています。
 タイトルページには、彩色が施された日本の男女を描いた図があり、その細やかな描写から日本の画を底本としていることがわかります。テキストは、全15章で構成されており、まずメイランは日本の政治機構の概説(1ページ)から始めています。続く第2章(10ページ)から第5章までは、主に長崎に関する記述となっており、街の様子や統治の仕組み、そして自身が滞在していた出島のこと、長崎周辺の寺院や茶屋について述べられています。第6章(53ページ)では、日本の階級制度を、第7章(66ページ)では日本の主要な宗教と、それ以外の様々な宗教、宗派について論じられており、ここでは迷信の一つとして「鬼退治」と題された図版が収録されています。第8章(84ページ)では、衣装について、第9章(96ページ)と第10章(107ページ)では、祝日と暦や干支、年代の区分について扱っています。第11章(117ページ)では日本語について、特に話し言葉を中心に論じており、オランダ語の格変化に相当する表現に注目して説明しています。第12章(125ページ)では、日本の学問や芸術、工業、産業が、第13章(146ページ)では日本の一年における諸行事が扱われています。第14章(186ページ)では、日本人の生涯に起こる様々な行事が論じられており、ここには「葬儀」の場面を描いた図版が含まれています。最後の第15章(176ページ)では、日本人の気質や性格について論じており、友愛の情に厚く忠誠心が高いことを評価する反面、秘密主義的で冷酷、色欲に耽るなどの欠点を指摘しています。メイランは自身の見聞したことを率直に平明な文体で論じており、本書は優れた日本文化論として評価されました。
 なお、彼のもう一つの著作は、彼の商館長時代最大の課題であった日蘭貿易に関するもので、『日欧貿易史概論(Geschiedkundig overzigt van den handel der Europezen op Japan.)』というタイトルで、彼の死後1833年に刊行されています。こちらの書物でメイランは、日蘭貿易の改善策を具体的に提案しており、日本開国後の1861年にはドイツ語版も刊行されています。

(執筆:羽田孝之)

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