ライブラリー図書
ポルトガル領インド発信 1551年~1558年イエズス会特別報告集
解説
イエズス会によるインドおよびアジア布教の開始以降、布教成果を記した報告書がローマ・イエズス会本部をはじめ、ヨーロッパの主要都市にもたらされるようになります。それらは報告集の形式で編集・印刷され、ヨーロッパ各地に流布していきました。1559年にミケーレ・トラメッツィーノにより刊行された『ポルトガル領インド発信 1551年~1558年イエズス会特別報告集』は、スペイン語からイタリア語への翻訳版です。
本書冒頭にはウルビーノ公爵夫人ヴィットリア・ファルネーゼへの献辞文が寄せられ、続く目次にはホルムズ、ブラジル、エチオピア、インド各地、マラッカ、モルッカ、日本などから発送された全54通の書翰表題が掲載されています。(書名に「1551年から1558年にかけて」とあるにもかかわらず、1549年成立の書翰も含まれていることに注意が必要です。)
目次掲載の表題から明らかに日本発信とわかる書翰は、フランシスコ・ザビエルの日本発信書翰(副題に1552年受信とあります)、修道士ドゥアルテ・ダ・シルヴァの1550年9月10日付け豊後発信書翰、バルタザール・ガーゴの1555年9月23日付け平戸発信書翰、松浦隆信の1555年10月16日付けインド管区長ヌーネス・バレト宛て書翰、以上の4通です。これらの書翰は、日本の地理やザビエル来日後の布教の進展などが述べられています。また本書には日本の布教状況に言及する書翰も計13通掲載されています。例えば、メンデス・ピントはマラッカ学院発信書翰を通じてザビエルの事蹟を紹介し、ルイス・フロイスは1556年1月7日付けマラッカ発信文書のなかでルイス・デ・アルメイダによる病院建設について触れています。
〔参考文献〕村上直次郎 訳『イエズス会士日本通信(上)』雄松堂書店、1968年。
(執筆:小川仁)
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