偉大なる聖イグナシオ・デ・ロヨラ伝

出版年 1645
著者 ニーレンベルク
出版地 マドリッド
言語 スペイン語
スペイン
分類 イエズス会

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解説

著者のニーレンベルクは、ドイツ人の両親を持ち、スペインで活躍したイエズス会士の著述家です。本書は、彼が編纂した全4巻からなるイエズス会士の伝記シリーズ第3巻として出されたもので、このシリーズは後年の別の作家にも引き継がれ、1736年までに全9巻が刊行されています。
本書のタイトルに最も大きく掲げられているのは、イエズス会創立者であるロヨラ(Ignacio López de Loyola, 1491-1556)で、本書は、彼の伝記を中心として紹介しています。日本との関係が深い記事は、ザビエルの伝記(167ページ~)にまず登場し、ここでは、ザビエルの日本を含むアジアにおける布教活動と各地で起こしたとされる奇蹟について論じられています。
ザビエルの伝記に続いて、最も日本関係の記事が充実しているのは、殉教者マストリリ(Marcello Fransisco Mastrilli, 1603-1637)の伝記で、224ページから掲載されています。マストリリは、すでに日本でキリスト教弾圧が激しくなっていた1637年、敢えて入国を決意し鹿児島に上陸後、直ちに捕らえられ長崎で殉教した宣教師です。彼の覚悟の殉教は当時のヨーロッパのイエズス会士に大きな衝撃を与えたと言われています。そのため、1640年前後には、スタフォード(Ignacio Stafford, 1599-1642)の『マストリリ伝』をはじめとして、数多くマストリリの伝記作品が相次いで刊行されており、本書でも、ロヨラ、ザビエルに次いでマストリリが扱われています。マストリリの日本への出発(320ページ)から、決意の入国(324ページ)と長崎での殉教(326ページ)といった彼の日本における軌跡をここでは読むことができます。
続いて340ページからは、日本における殉教者とその簡単な伝記が紹介されています。ここでは、パウロ三木や、ディエゴ喜斎、木村セバスチャン、天正遣欧使節の一人でもあった中浦ジュリアンといった、数多くの日本人殉教者が紹介されています。また、後半584ページでは中浦ジュリアンとともに殉教した宣教師フェルナンデス(Bento Fernandes, ?-1633)や、第3代日本司教を務めたセルケイラ(Luis Cerqueira, 1552-1614)(694ページ)、西洋医学の日本への紹介の先駆を成したアルメイダ(Luís de Almeida, ?-1583)(718ページ)らヨーロッパ人宣教師の伝記も紹介されています。

(執筆:羽田孝之)

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