トンキン・日本報告

トンキンと日本に関する歴史と報告の表題紙 トンキンと日本に関する歴史と報告の背表紙
出版年 1665
著者 マリーニ
出版地 ローマ
言語 イタリア語
イタリア
分類 イエズス会

日文研データベースでこの図書の本文を見る

解説

徳川幕府による禁教・鎖国政策にともない、日本におけるイエズス会の布教活動は縮小を余儀なくされます。この状況下でイエズス会日本管区はインドシナ半島の諸地域を新たな布教地として見出し、展開していきました。日本布教終了後も「日本管区」という呼称が残されたのは、このような経緯によります。管区の新たな布教事業で最も成果が得られたのは、トンキン(現在のベトナム北部)でした。ジョヴァンニ・フィリッポ・デ・マリーニ(1608-82)はジェノヴァ出身のイエズス会士で、1647年から1658年までトンキンの布教に従事しました。その後、日本管区代表プロクラドール(ヨーロッパ各地において聖俗界の権力と交渉し、布教に必要な人的・経済的支援を獲得する職務)に就任し、マカオからローマに派遣されました。このプロクラドール就任中の1663年、マリーニはアレクサンドル7世への献呈もかねて『トンキンを中心とするイエズス会日本管区布教史』をローマで執筆・刊行しました。同書は全5部、第1部から第3部までがトンキン、第4部がコーチシナ、カンボジア、シャム、海南島など、第5部がラオスを扱っています。
日文研所蔵の『トンキン・日本報告』(全540ページ)は、上述の著作の第1部・第2部のみを収録した抄版といえます。管区の現況を扱う本書冒頭の約30ページに日本関係の記述が認められ、そこでは、日本におけるキリシタン迫害、アントニオ・ルビノ一行のフィリピン経由による日本渡航と殉教、長崎におけるオランダ人の交易、シャム在住日本人による日本情勢に関する証言などが見られます。また扉には、日本管区各地域の人々がキリストの光背に照らされている様子を描いた図像が掲載されています。

〔文献〕Charles E. O’Neill & Joaquín María Domínguez (eds.), Diccionario Histórico de la Compañía de Jesús: Biográfico-Temático. vol. 3. Roma: Institutum Historicum Societatis Iesu.

(執筆:小川仁)

もっと詳しく見る