ライブラリー図書
アジア旅行記に見る美景
解説
ウェーダ(Paulus Weeda)は、航海や探検の歴史書を当時多く著しており、またオランダの東インド統治の歴史を扱った作品も残しています。研究書というよりは、教育用や教養書としての読み物の類の作品が中心で、本書もヨーロッパの有名な航海記を新旧織り交ぜて、全2巻で紹介する内容です。ウェーダは、本書の狙いを、歴史的な旅行者の記録から楽しみを得ると共に教養を磨くことにあると述べており、序文ではヨーロッパの旅行者と地理情報の発展、交流の歴史の外観を説明することから記述を始めています。
第1章(第1巻22ページ)は、マルコポーロ(Marco Polo, 1254-1324)のアジア航海記が紹介されています。ジパング(Zipangou)として伝えられた日本についての記述は凡そ90頁にわたり見られ、ポーロ自身は実際に日本を訪れたことはなかったものの、彼が伝えた黄金に富んだ独立王国としての日本像は、その後15世紀から16世紀におけるヨーロッパの日本観に絶大な影響を及ぼしたことをウェーダは説明しています。
第2章(116ページ)は、ピント(Fernão Mendes Pinto, 1509?-1583)の『東洋遍歴記』が紹介されており、257ページから琉球の記述が始まり、日本について基本的にピントの記述に基づき著わされています。種子島への漂着や豊後の大友氏との交流などもここで記載されています。
続く第2巻では、冒頭の第3章で、日本に最初にたどり着いたイギリス人であるウィリアム・アダムス(William Adams, 1564-1620)が紹介されており、本書における日本に関する記述は、この章が最も充実しています。彼がオランダ船で出航してからの航海記、日本に漂着してからの出来事、家康の引見とその後日本の要人として暮らしたこと、イギリス人セーリス(John Saris, 1579?-1643)による日本来航の際に家康との取次に尽力したことなどが、40ページにわたって紹介されています。
以下第2巻では、第6章まで続き、イギリス最初の清への全権大使を勤めたマカートニー(George Macartney, 1737-1806)などの航海が紹介されています。
(執筆:羽田孝之)
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