学習室エッセイ

ジャポニズム楽曲・探訪記 Vol.3 ―フィレンツェ、そしてナポリ―

著者
光平有希
掲載年月日
2020-08-26

ジャポニズム楽曲探訪――フィレンツェでの目的地は、イタリア最大規模の公立図書館「国立フィレンツェ中央図書館」でした。1714年、文筆家アントーニオ・マリアベーキの遺言によりフィレンツェに3万冊の蔵書が寄付されたのをきっかけに設立された同図書館は、1861年にパラティーナ図書館と統合されたことを機に国立図書館に改称されました。

現在、およそ600万点の出版物、定期刊行物12万タイトル、写本2万5千点、自筆原稿1千万点超が所蔵されています。そのなかにジャポニズム楽曲の刊行楽譜ならびに手稿譜も含まれており、今回の調査では、19世紀末~20世紀中ごろに発表された歌曲や和洋楽器によるアンサンブル楽曲などの楽譜を収集してきました。

次いで、ナポリではサン・ピエトロ・ア・マイエッラ教会の複合施設中に位置するナポリ音楽院(正式名称はサン・ピエトロ・ア・マイエッラ音楽院)を来訪しました。1808年の創設以降、メルカダンテやドニゼッティ、スカルラッティ、ベッリーニなど数々の著名な音楽家を輩出してきたナポリ音楽院。うつくしい回廊の中庭を抜けた先に、図書館は佇んでいました。なかに入ると、ストラディヴァリのハープを始め、メルカダンテのフォルテピアノや、ショパンの手袋、ジュディッタ・パスタやマリア・マリブランの肖像画などが出迎えてくれます。同図書館では、数日にわたり19世紀に刊行あるいは発表された楽曲作品群について目録や楽譜などを丹念に調査することができました。