学習室エッセイ

イタリア文書館探訪 コロンナ文書館(2)

著者
小川仁
掲載年月日
2020-11-11

「聖なる洞窟」(ベネディクト修道院)の外観と内部

前回のコラムでは、コロンナ文書館がスビアーコのベネディクト修道会サンタ・スコラスティカ修道院図書館に移設された経緯と、当該修道会について触れてきました。今回は、サンタ・スコラスティカ修道院についてもう少し詳しく触れたうえで、コロンナ文書館が併設されているサンタ・スコラスティカ修道院図書館について見ていきたいと思います。

前回触れた「聖なる洞窟」で隠修生活を送ったベネディクトゥスは、「聖なる洞窟」から2㎞ほど下ったところに修道院を建設(520年)しました。この修道院はロンバルド人やハンガリー人に破壊されますが、その都度再建を果たし、10世紀末にローマ教皇ベネディクトゥス7世により、ベネディクトゥスの双子の妹、聖スコラスティカ(480年頃~547年頃)に奉献されたことから、サンタ・スコラスティカ修道院と呼ばれるようになり、現在に至っています。

また、この修道院と活版印刷とのあいだには非常に深い結びつきがあります。活版印刷術は1445年頃ドイツ人グーテンベルグにより発明されますが、サンタ・スコラスティカ修道院には、1465年頃に活版印刷機が導入されており、ここはイタリアにおける活版印刷創生の地とも言える場所なのです。

サンタ・スコラスティカ修道院図書館外(右は本部棟、左は修道院本屋への渡り廊下)では、コロンナ文書館が併設されているサンタ・スコラスティカ修道院図書館について見ていきましょう。図書館は、元々は製粉場として使われていた3階構造の建屋、修道院と図書館を結ぶ渡り廊下を兼ねた書庫、修道院本屋(ほんおく)の一部に設えられた書庫から構成されています。元製粉場の建屋が図書館の本部棟のような位置づけとなっており、一階には15世紀中頃に修道院で印刷された聖書などの非常に貴重な出版物コレクションが展示されています。二階は図書館事務室と閲覧室が設けられており、書庫から出納された古文書は、この閲覧室で目を通すこととなります。日本関係史料を含んでいるコロンナ文書はどこにあるのかと言いますと、修道院本屋の一部に設えられた非常に広い正方形の吹き抜け構造のスペース、いわば図書館の最奥部に収蔵されており、ここが狭義でのコロンナ文書館ということができるでしょう。次回は収蔵されているコロンナ文書の概要、日本関係史料を具体的にお伝えしていきたいと思います。

 

図書館内部の様子(左から最初期出版本、製粉場で使われていた石臼と製粉機械、閲覧室)