学習室エッセイ

フロイスの見た秀吉の大坂城

著者
フレデリック ・クレインス
掲載年月日
2022-06-30

2022629日にNHK総合番組「歴史探偵」シリーズにおいて「VR探検!秀吉の大坂城」が放送されました。筆者もわずかばかりですが、取材協力をさせて頂きました。当日ご覧になっていない方は、見逃し配信や再放送でぜひご覧になってください!豊臣大坂城築城は日本一大イベントだったにもかかわらず、それについてのイエズス会士による記述はわずかしかありません。その中でも最も重要な記述の一つは1585101日付のフロイスによる日本年報追記にみられます(Segvnda parte das cartas de Iapão que escreuerão os padres, & irmãos da companhia de IESVS.Evora, 1598)。下記にその一部分を和訳してみました。〔〕内は訳者による注釈です。

〔記〕

羽柴筑前殿は、戦争の時でも平和の時でも、すべてのことにおいて、彼の偉大さや彼の領地の豊かさが彼の前任者信長のそれを越えていると皆が主張しているほどの繁栄した成功を収めた。そして大坂については、私が過去に記したように、6年間包囲され、僧侶たちは彼らのすべての富、人々、華やかさ、および船とともに雑賀へ去り、街、寺院、要塞は崩壊し、灰燼に帰した。しかし、この地は都に隣接している五畿内の中でも最もすばらしい場所の一つであるため、筑前殿は、新たな都市、御殿、要塞を造るのにこの地を選んだのである。というのも、信長がその壮大さ・偉大さを示すために造らせた安土山のすべての建造物を越えた。最初に筑前殿はそこに非常に高い塔と、それに濠、城壁、堡塁を備えた非常に広々とした要塞を造った。それぞれの堡塁は塔のようになっていて、表と裏に門があり、扉は鉄で覆われ、内部には部屋と居室があり、彼の最も親しい部下や従者が住んでおり、そこには彼の財宝や弾薬や食糧のための大きな倉庫もある。これはすべて元の〔石山本願寺の〕要塞の城壁と濠の内側に築造されたが、元の要塞は完全に改築され、塁壁と塔が新たに付け加えられた。それらは新しい建造物と壮大にかつ美しく調和している。特に中心の塔は、遠くから見えるように意図的に金と青銅で飾られ、より一層の壮大さと誇らしさを示している。

この新しい要塞の中には「ニワ」があり、これは私たちの間では素晴らしい庭園に相当し、その自然石、樹木、草、緑などの多くの自然のもので四季の多様性をなぞらえている。そして、居心地の良い場所には、台所として機能する「ザシキ」とすがすがしい茶の湯の建物があり、それには庭園が隣接しており、爽やかで優雅な雰囲気を醸し出している。反対側の丘には、非常に豊かで美しい金色の「ザシキ」が建てられており、眼下には緑の野原と優雅な川が広がっている。これらの「ザシキ」は、自然物や、日本と中国の古代の物語などを描いた、非常に多様な絵画で飾られている。