ライブラリー地図
日本帝国図
解説
本地図〈日本帝国図〉は、フランス人地図製作者のジル・ロベール・ドゥ・ヴォゴンディ(Gilles Robert de Vaugondy, 1688–1766)によって製作された地図です。
ヴォゴンディは、息子のディディール(Didier Robert de Vaugondy, c.1723–1786)とともにパリを中心に活動し、様々な地域の地図を手がけました。ヴォゴンディは17世紀フランスを代表する地図製作者ニコラス・サンソン(Nicolas Sanson, 1600-1666)の子孫であったこともあり、サンソンから引き継いだ膨大な地図を参照しながら地図製作に取り組んでいました。ヴォゴンディ父子によって編纂され、1757年に刊行された『世界地図帳』(Atlas Universel, 地図104枚所収)では、それらの地図資料が大いに活かされています。なお当該地図帳は、当時最先端の観測天文学的知見が盛り込まれていることから、18世紀で最も重要な地図帳の一つとも言われています。
1750年に製作された本地図は、『世界地図帳』の94枚目の地図として所収されており、日本列島の主な輪郭線は、ベリン(Jacques-Nicolas Bellin, 1703-1772)の『日本図』、津軽海峡や北海道南部、朝鮮半島の輪郭線は、ダンヴィユ(Jean-Baptiste Bourguignon d’Anville, 1697-1782)の『タタール・中国図』(Carte Generale de la Tartarie Chinoise)を参照したものとなっています。また、津軽半島や下北半島、津軽海峡は、当時の地図のなかで最も正確に描かれていました。
(執筆:小川仁)