中華帝国・韃靼地方・朝鮮王国図(日本列島図付)

制作年 1748
制作者 ボンヌ
出版地 パリ
言語 フランス語
フランス
分類 アジア図

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解説

 ボンヌ(1727-1789?)は、18世紀後半のフランスを代表する地図帳出版者で、1773年にはベラン(1703-1772)の後を継いで王室地図制作者にも任命されています。1786年の『一般携行地図帳(Atlas Portatif Génerale)』や1788年の『百科事典地図帳(Atlas Encyclopedique)』などの彼の代表作は、革命前後のフランスにおける地図帳として最も影響力を持った作品です。
 この地図は、列強諸国の植民地政策を痛烈に批判した『両インド史(L’Historie philosophique et politique des établissement et du commerce des Européens dans les deux Indes.)』などの著作で知られるレナール(1713-1796)の同書のためにボンヌが1780年に刊行した地図帳『既知となっている地球上の全部分を示す地図帳(Atlas de toutes les parties connues du globe terrestre.)』に収録されていたと思われる地図で、地図枠外右上に記されたNo.16という記載からそれが確認できます。
 その名が示す通り、大陸北部にはバイカル湖、西端にはチベット、南端にはフィリピン、そして東端に日本列島が描かれている地図です。特に中国については多くの地名や地理情報が書き込まれていますが、これはレナールのテキストに合わせて充実させられているものと思われます。
 ボンヌは彼の地図帳において多くの日本地図を出版していますが、そのいずれもが先行する何らかの日本地図を範に採っています。この地図でボンヌが参照したのは、先代の王室地図制作者であったベランの日本図と思われ、ベラン自身もケンペルの『日本誌』に収録された日本地図を範に採って日本地図を作成していることからケンペル型の日本地図と言えます。この地図の主眼はあくまで大陸部分の説明にありますが、日本については大陸との相対的な位置関係を示すように描かれ、京都(都、Meaco)、大坂(Osaca)、江戸(Iedo)、長崎(Nangasaki)の地名が確認できます。ただし、九州は誤って四国(I. de Xixo)とされています。北海道にあたる部分は、蝦夷ヶ島(Jeso Gashima)として島とも大陸とも判断できない輪郭で描かれていますが、ダンビル(1697-1782)らの地図を参照したものと思われます。また、南方には琉球(Lequeo)がかなり大きく描かれています。

(執筆:羽田孝之)