ライブラリー地図
日本帝国図
解説
本地図〈日本帝国図〉は、フランス人地図製作者で、水路測量技師でもあった、ジャック・ニコラス・ベリン(Jacques-Nicolas Bellin, 1703-1772)によって製作された地図です。
パリに生まれたベリンは、1721年、18歳の時にフランス海軍の水路測量技師となり、1741年にはフランス水路局の主任技術者に就任、フランス海軍アカデミーやロンドン王立学会のメンバーも務めるなど、50年にわたり水路図や地図の製作に携わり、18世紀の地図製作に多大なる影響を与えました。その証左として、当時のヨーロッパでは、ベリンの地図をコピーしたものが数多く出版されています。
ベリンは、1736年にフランス人イエズス会士のピエール・フランソワ・ザビエル・シャルルヴォア(1682-1761)によって書かれた『日本史』に、日本図(1735)を寄せたのを皮切りに、同著作内で江戸図(1736)といった都市図も手掛けています。本地図は、上述のシャルルヴォアの『日本史』に掲載された日本図がベースとなっており、格子模様に描かれた緯度と経度、そしてロココ様式の装飾が施された表題が特徴的です。フランスの小説家でジャーナリストのプレヴォーが編集した『旅行記集成』(全20巻、1746-1789)第10巻の5番目の地図として、本地図は掲載されています。当時の地図は、掲載されている書籍から切り抜かれ地図や、書籍に綴じられる前の地図が売り出されることが往々にありました。本地図もその一例であり、オリジナルの地図に彩色が施され、販売されていたと考えられます。
(執筆:小川仁)