ライブラリー地図
新日本地図
解説
1636年に英語で刊行されたメルカトルの地図帳(Gerardi Mercatoris-Atlas Or A Geographicke Description…The Second Vol.)に収録された日本地図で、基本的には1595年のオルテリウス「テイセイラによる日本列島図」を踏襲しています。ただし、サイズはオルテリウスの地図からやや小さくなっています。内容面では、オルテリウスの地図にあった装飾が取り替えられていることを除くと、朝鮮半島部分にラテン語のテキストが追加されていることが実質的な唯一の変更点です。オルテリウスの地図では、朝鮮半島が誤って島として描かれていますが、この地図では地形はそのまま踏襲しつつも、朝鮮が島なのか半島なのかは定かではない旨の説明が追加されています。
オルテリウスの日本地図は、彼の盟友でメルカトル(1512-1594)がその版権保有者でしたが、メルカトル自身はこの地図を発表するまでに亡くなっています。日本地図を含むオルテリウス地図帳の版権は息子のルモンドに引き継がれますが、地図制作者のヨドクス・ホンディウス(1563-1612)が1604年にそれを買い受け、新たに版を起こして、1606年に自身の地図帳(Gerardi Mercatoris-Atlas Sive Cosmographicae Meditationes…)として刊行し、そこには、本図の直接の原型となった「日本図」が含まれています。
ヤンソニウス(1588-1664)は、ヨドクス・ホンディウスの義理の息子で、ヨドクス・ホンディウスの息子たちと協力して、地図帳出版に精力的に取り組みました。ヤンソニウスらによる地図帳は、基本的にはヨドクス・ホンディウスのそれを踏襲しており、地理情報の追加などはあまり行われていません。本図も、「新たに描かれた(NOVA DESCRIPTIO)」とタイトルが変更されているものの、1606年地図帳に収録されたものからほとんど変更が加えられていません。目につく点としては、装飾や縮尺図の一部が変更されている他、会場に描かれていた船舶の図が、日本のものとされる図から、ヨーロッパのそれに変更されているくらいです。ただし、船舶図の下部にあるテキストはそのまま踏襲されており、「日本の船」となったままです。
(執筆:羽田孝之)