ライブラリー地図
日本図
解説
ロッシ(Luigi Rossi)は、19世紀前半のミランで出版業を営んでいた人物で、彼の代表作は、1820年から21年にかけて刊行された『52枚の地図からなる新世界地図帳(Nuovo atlante di geografia universale in 52 carte. 1820–21)』で、本図もこの地図帳の第27図として含まれていたものです。 ロッシの地図帳のための銅版を作成したのは、ガウデンツィオ(Gaudenzio Bordiga, 1773-1837)とベネデット(Benedetto Bordiga, 1766-1847)の二人のボルディガ兄弟で、彼らは同時代のフランスの地図製作者ビュアージュ(Jean-Nicolas Buache, 1741-1825)が1820年ごろに刊行した日本図を底本にして本図を作成しました。 地図としては極めてシンプルで、各藩が赤線で区分され、それぞれの藩名と主要都市が明記されているのが目につきます。経度は、当時のフランスでよく用いられていたフェロ子午線による数字を地図上部に、それとちょうど20度ずれることになるパリ子午線による数字を地図下部に示しています。ヨーロッパで刊行された19世紀前半の日本図としては、極めてオーソドックスなもので、18世紀のいくつかの日本図を参照してバランスよく構成されており、当時の標準的な日本図と言えるものです。
(執筆:羽田孝之)