ライブラリー楽譜
日本の提灯踊り
解説
本作品の作曲者ツィンマーZimmer, Karl(1869~1935)は、ドイツやハンガリー交響楽団で指揮者を務める傍ら、作曲活動にも精力的に取り組んだ音楽家です。彼は主に、サロンなどで演奏される軽音楽を多く作曲しています。とりわけ注目されたのは、当時「異国情緒あふれる音色の絵画」と評された東洋風のネーミングを冠された楽曲でした。
ツィンマーはいくつかのペンネームを持っていましたが、そのうちのひとつ「ヨシトモYoshitomo」は、東洋風の題名をもつ楽曲〈セイロンの茶園にて〉〈北京からの習作〉〈桜の花〉そして、本作品〈日本の提灯踊り〉の出版時に用いられました。「ヨシトモ」として発表したこれらの楽曲は、もともとは小編成のオーケストラ用に作られ、コンサートの定番曲となったほか、録音されたレコードも好評を博しました。なかでも〈日本の提灯踊り〉はその後、家庭でも演奏できるようピアノ作品として編曲され、ドイツを中心に広く愛された1曲です。
本作品は3部形式で構成され、冒頭は行進曲風にイ短調で力強くはじまります。ややアラビア風にも聴こえるようなメロディラインがフォルテとピアノで繰り返されるなか、時おりハ長調のやや緩やかな響きがアクセントとなり、続くワルツへといざないます。和音が多用されることもあり、3拍子になっても力強さと重々しさを纏いつつワルツは進行しますが、中間部で調性がイ短調からイ長調へと変化をみせます。ようやく感じた明るさもつかの間、最後はまた力強いコーダになだれ込むようにして楽曲は幕を下ろします。
(解説:光平有希)