ライブラリー楽譜
ゲイシャ
解説
本作品は、舞台作曲家シドニー・ジョーンズ(1861-1946)が手掛けた2幕から成る喜歌劇『芸者』からの抜粋楽曲集です。当時若かりし無名のジョーンズが作曲を担当した『芸者』は、その少し前にイギリスで一世を風靡した喜歌劇『ミカド』をも凌ぐ大ヒット作品となり、本作品でジョーンズの名は一躍イギリス全土で知られるようになりました。
1896年4月25日にロンドンのダリー劇場でおこなわれた初演から好評を博した『芸者』は、その後760回にわたって繰り返し公演され、その人気はイギリスだけに留まらずヨーロッパ各国に広まっていきます。
喜歌劇『芸者』の台本は、フランスの作家ピエール・ロティの『お菊さん』にヒントを得て制作されたといわれていますが、実際は、日本のとある港町で中国人ウン・ハイの経営するティーハウスが舞台となり、ヒロインの芸者ミモザを中心に、愉快な恋愛劇が展開されるといった構成です。
音楽面では、あるところではビクトリアン調の旋律が顔を覗かせ、またあるところではワルツやポルカなど西洋舞曲のリズムが際立つ楽曲挿し込まれるなど、それぞれ3分程度の楽曲がテンポよく劇を盛り上げていきます。そのなかで、時折オリエンタル調の着色が施されるなど、ジョーンズによる様々な音楽的工夫も感じられる作品に仕上がっています。
本楽譜集は、2幕の劇中曲から序曲を含めた約10曲の楽曲を抜粋し、ピアノ独奏曲用にアレンジしたものが1曲仕立てにまとめられています。劇場のみならず、家庭やサロンなど身近な場所でも『芸者』が親しまれていたことを示す資料ともいえます。
(解説:光平有希)