日本

出版年 1852
著者 マクファーレン
出版地 ニューヨーク
言語 英語
アメリカ
分類 日本文化

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解説

 本書は、ペリー(Matthew Calbraith Perry, 1794-1858)による日本遠征が実施される直前のアメリカにおいて流布していた日本についての情報と、遠征隊の意義について示している書物です。
 著者のマクファーレン(Charles Macfarlane, 1799-1858)は、スコットランド出身の著作家で、歴史書や旅行記、地誌に関する著作が多数ある人物です。アメリカでは、ペリーによる日本遠征隊の派遣の実施の10年以上前から、日本をはじめとした太平洋を挟んだ東アジア沿岸諸国との交易開拓の重要性が様々な立場から主張されており、その一環で日本に対する関心も徐々に高まりつつありました。本書もそうした文脈に乗って出されたものです。
 テキストは全11章からなり、ヨーロッパで既刊された数々の日本に関する先行文献を駆使しながら、日本について知りうる情報をまとめた内容になっています。まず、第1章では、ヨーロッパ人と日本との交流の歴史を16世紀に遡って、そこから現代に至るまでの記録を論じています。この章の最後の部分では、アメリカが日本の開国に向けて遠征隊を派遣することは、一国の利益のみならず、世界的な意義を有するものであることを強調しており、日本と西洋との長い交流の歴史において、日本遠征隊の派遣が画期的な事業となることを論じています。第2章以降は、日本に関する知識を分野別に手際良くまとめており、第2章が地理的概況、第3章は人種とその起源、第4章は宗教、第5章は統治機構、第6章は鉱物、第7章は自然産物、第8章は動物、第9章は芸術、第10章は大衆文化、第11章は言語、という構成になっています。いずれの記述も先行文献による参照箇所を本文下部に記しており、著者の情報源が確認できます。
 また、本書は先行する新旧の様々な文献から取ってきた多くの図版があることも特徴的ですが、その描写や配置の正確さに欠けるところがあるきらいはあります。とはいえ、来日経験のない著者が書いた書物であることや、本書が英語圏、特にアメリカで広く流通した点に鑑みると、遠征隊派遣直前のアメリカの対日本認識を示す書物として重要な意味を持っています。

(執筆:羽田孝之)

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