日本俘虜実記 全2巻

出版年 1818年
著者 ゴローニン
出版地 ロンドン
言語 英語
国 イギリス
分類 図書

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解説

本書は、1811年から1813年にかけて箱館にて捕縛の身となったロシア海軍士官ゴローニン(Vasilii Mikhailovich Golovnin, 1776 – 1831)が、帰国後にその体験記として刊行した作品を英語に翻訳したものです。ゴローニンは、太平洋北部海域の測量を命じられた戦艦ディアナ号の艦長で、1811年からは千島諸島南部の測量を行っていました。同年6月に国後島の測量をしていた際に泊湾で捕縛され、以後1813年に渡るまで2年余にわたる日本での抑留生活を余儀なくされました。彼が捕えられた背景には、1804年に来日したロシア遣日使節レザノフ(Nikolai Petrovich Rezanov, 1764 – 1807)が、通商交渉失敗後に唐太・択捉での略奪を部下に行わせた事件(1806-1807年のフヴォストフ・ダヴィドフ事件)に起因する日露関係の緊迫化がありました。

ゴローニンは、勾留中に脱走を試みて失敗する一方で、馬場佐十郎ら通詞にロシア語を教授し、間宮林蔵に天測量地法を伝授するなど、勾留中に接触した日本の通詞や学者との交流を深めました。彼らとの交流を通じて、日本の政治や社会、人々の様子を観察する機会を得たゴローニンは、勾留中に密かに作成していた日記をもとにして自身の体験を綴った『1811年、12年及び13年に渡る日本に捕縛時の体験記、並びに日本とその人々についての考察』(以下『日本俘虜実記』)を1816年にサンクトペテルブルクで刊行しました。

『日本俘虜実記』は、それまで西洋における現代日本情報が基本的にオランダ東インド会社関係者によるものしかなかった状況にあって、彼らとは全く違う経緯で日本に入国、滞在し、見聞する機会を得た西洋人がもたらした新しい日本情報として大反響を呼びおこしました。『日本俘虜実記』は、はじめロシア語で官費にて刊行され、検閲による原稿の削除がなされていないドイツ語版を底本にして、フランス語、オランダ語、デンマーク語、スウェーデン語(『アジア諸紀行集』所収)など各国語への翻訳、抄訳がなされました。また、同書はオランダ語訳版が日本にもたらされて、馬場佐十郎らによって『遭厄日本紀事』として邦訳もなされています。

本書は数ある翻訳版の中の英語訳版初版にあたるもので、原著刊行の2年後に2冊本として刊行されています。『日本俘虜実記』は、ゴローニンの体験を時系列に沿って記した本部(第1部、第2部)と、ゴローニンによる日本社会、文化、人々に対する独自の考察をまとめた附論都(第3部)で構成されていますが、この英訳初版は体験記に当たる本部のみを翻訳したものです。また、第2巻の巻末には、ゴローニン捕縛時にデイアナ号艦長となったリコルドの、『日本沿岸航海および対日交渉記』も収録されています(221ページ~348ページ)。本書ではゴローニンと日本の役人との交流の様子がゴローニンの視点を通じて非常に生き生きと描かれていて、読み物としても大変優れた作品になっています。日本の通詞や学者たちの交流についても詳しく書かれており、第1巻第5章(231ページ〜281ページ)に登場する村上貞助(Murakami-Teske)や、第2巻第4章(105ページ〜155ページ)に登場する馬場佐十郎(BABA-SADSEEROO)をはじめとする日本の通詞たちに対しては、優れた記憶力と見識に富んでいるとして特に高い評価を与えています。

(執筆:羽田孝之)

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