日本論

出版年 1847
著者 ラウツ
出版地 アムステルダム
言語 オランダ語
オランダ
分類 日本

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解説

 本書は、日本を取り巻く国際情勢が急速に緊迫感を増しつつあった1847年に、オランダで刊行された日本論です。副題に「ヨーロッパ諸国との交流における日本の政治と、市民の考え方について」とあることからもわかるように、主に日本の対外政策の考察に焦点を当てた作品です。
 著者のラウツ(Ulrich Gerard Lauts, 1787-1865)は、企業家の経歴を持つ著作家、研究者で、特にオランダの東インド政策の歴史を研究しており、本書のほか、1852年から66年にかけて全7巻(3冊)からなる大著『インドにおけるオランダ勢力の確立、繁栄そして衰退の歴史(Geschiedenis van de vestiging, uitbreiding, bloei en verval van de magt der Nederlanders in Indie.)』を刊行しています。
 『日本論』の序文でラウツ自身が述べるところによると、それまでの日本に関する類似の著作にない本書の特色として、オランダの対東インド政策に関する一次資料をふんだんに用いていること、また1809年から1812年、1817年から23年までの長きに渡って滞日経験(出島商館長を含む)のあるブロンホフ(Jan Cock Blomhoff, 1779-1853)から直接様々な助言を受けて書かれていることを挙げています。さらに、日本語資料の読解についてはシーボルトとの協力、共著で知られるホフマン(Johann Joseph Hoffmann, 1805-1878)の協力を仰いだことも述べており、当時、日本情報に関する最新にして最も信頼の置ける人物の協力を得て、本書が書かれていることを強調しています。
 テキストは三部構成になっており、第一部では日本に関する概論で、統治機構、16世紀以降の歴史、学問や産業、農業、衣類、教育、道徳、人民の気質などが論じられています。第二部では、本書の主題であるヨーロッパ諸国と日本との交流について、主に歴史的観点からの考察が行われています。まず、日本と最も古い交流の歴史を有するポルトガル(1536年〜1639年)、次いで短期間ながらもオランダと同じく商館を構えた歴史を持つイギリス(1613年〜1623年)、そして、最も長くそして唯一の継続した交流関係を有するオランダ(1600年〜1846年)の交流史が論じられます。第三部では、近年の欧米各国の日本開国の試みを概観しており、ロシア、イギリス、北アメリカ、フランス、デンマークによる、国家公認のもの、民間によるものを含め日本との交流関係樹立の試みが扱われています。
 本書刊行の3年前の1844年には、アヘン戦争の帰結を危惧したオランダ王ウィレム二世(Willem Frederik, 1792-1849)による、日本に対する開国を促す親書が送られており、幕府はこれを拒否していますが、日本を取り巻く対外情勢は急速に緊迫感を帯びつつありました。本書は、日本の対外政策が転換期を迎えつつあった時期における、オランダの日本対外政策に対する認識を示す歴史的に重要な書物です。

(執筆:羽田孝之)

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