スペックス商館長の書簡綴帳

スペックス商館長の書簡綴帳
                       
著者 エルベルト・ワウテルセン、ヤン・ヨーステン、メルヒヨル・ファン・サントフォールトなど
資料番号 ハーグ国立文書館所蔵NFJ 276
制作年月日1614年8月4日~1616年12月29日
分類 書簡

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解説

スペックス商館長の書簡綴帳
ハーグ国立文書館所蔵NFJ 276

 この史料は初代商館長ジャック・スペックスが1614年8月4日から1616年12月29日までの間に受信した書簡の綴帳です。スペックスは1609年に平戸オランダ商館長になり、1613年にヘンドリック・ブラウェルと交替して一時的に出国しましたが、1614年に再び商館長として平戸に戻り、1621年までの間二期目を務めました。従って、この書簡綴帳は、スペックスが二回目に日本に到着してから2年半の間に受信した書簡の控えを手元に残して綴じたものです。各書簡は、受信した順番に17世紀独特の美麗な書体で整然と筆写されています。初期の数十通の各書簡の末尾には、受信した日付および返信の有無についての覚書が加筆されています。
 この綴帳には130通の書簡の写しが収められています。最初の書簡は、第二代商館長ヘンドリック・ブラウェルからのものであり、平戸への渡航の仕方に関する指示が記載されており、スペックスは日本に向かう途中の日本近海の海上で受信しています。書簡の内最も大きな割合を占めているのは、京都、大坂、堺、江戸、長崎、鹿児島、山口などの日本国内各地から送付されたものです。差出人は、関西に駐在していた商務員エルベルト・ワウテルセンや平戸を拠点として日本の各地へ行き来していた商務員マテイス・テン・ブルッケと商務員マルティン・ファン・デル・ストリンゲの他、1600年に日本に漂着したオランダ船リーフデ号の乗組員で平戸商館と取引していたメルヒヨル・ファン・サントフォールト、ヤン・ヨーステン・ローデンステイン、アドリアーン・コルネーリセン、イギリス人舵手のウィリアム・アダムスなどです。こうした国内文通の他に、スペックスが海外から受信した書簡の写しも数多く収められています。その中の代表的なものとして、アムステルダム本部の重役達、バンタム駐在の商務総監ヤン・ピーテルスゾーン・クーン、パタニ商館長ヘンドリック・ヤンセン、シャム商館長マールテン・ハウトマンなどからの書簡が挙げられます。各書簡の内容としては国内取引や貿易に関するものに最も多くの紙面が割かれていますが、その合間に各地の状況についても記述されており、特にエルベルト・ワウテルセンの筆による大坂の陣についての詳細な記述が見られます。
 同綴帳は、以後、平戸オランダ商館に保管され、1641年のオランダ商館の出島への移転に伴って、出島オランダ商館に移された後の幕末までは同商館で長期間に渡って保管されていましたが、1852年にバタフィアへ送られ、その後の1863年にオランダに渡り、現在ハーグ国立文書館が所蔵しています。
(執筆:クレインス、フレデリック)