2月9日に、1640年頃のオランダ商館の復元建物「平戸オランダ商館」において、国際シンポジウム「国際海洋都市平戸と異文化へのあこがれ―在外資料が変える日本研究―」が開催されました。(主催:人間文化研究機構ネットワーク型基幹研究プロジェクト「日本関連在外資料調査研究・活用事業」/共催:平戸市、松浦史料博物館、平戸オランダ商館)
本シンポジウムは、人間文化研究機構の岸上伸啓・副センター長と岡山芳治・松浦史料博物館館長による開会挨拶、そして日文研の稲賀繁美教授の趣旨説明で開幕。
続いて行われた基調講演「松浦静山と平戸商館時代」では、松田清・京都大学名誉教授が、好学の平戸藩9代藩主の松浦静山が家史編纂(修史)のため収集した西洋史料をもとに、静山の目を通して浮かび上がった平戸商館時代像について臨場感あふれるお話をされました。
続く第一部では、まず日文研のフレデリック・クレインス准教授とライデン大学のシンティア・フィアレ研究員が、現在、日文研とライデン大学が協力して進めている平戸オランダ商館関連文書の調査・研究状況に関する概要説明と、平戸オランダ商館初期の活動実態を報告しました。続いて、平戸市文化観光商工部の前田秀人氏はオランダ商館の会計帳簿について、さらに国立歴史民俗博物館の福岡万里子准教授は、シーボルト晩年の「日本博物館」構想に焦点を当てた報告を行い、在外一次資料を主軸とした魅力あふれるお話をされました。
さらに第二部では、まず京都外国語大学のシルヴィオ・ヴィータ教授が、昭和戦前期に大分でキリシタン資料を収集したイタリア人宣教師マレガ神父の活動や収集史料を通じてみる昭和期キリシタン研究の様相を紹介。また、国立国語研究所の朝日祥之准教授は、デジタル人文学という手法を駆使し、ハワイ出身の帰米二世・比嘉太郎が収集した資料を整理する過程と研究の新たな可能性について言及しました。最後に、日文研の根川幸男機関研究員は、平戸からブラジルへ渡った山縣勇三郎の足跡をたどる発表を行いました。
総合討論・質疑応答では、フロアからも多くの質問が投げかけられ、会場は大いに盛り上がり白熱した議論が展開されました。合計で113名の参加者の下、シンポジウムは盛会裡のうちに幕を閉じました。
なお、当日のプログラムは、こちらをご覧ください。また、松田名誉教授とクレインス准教授の発表の様子は近日中に本サイト内に掲載する予定ですので、乞うご期待ください!
(文責:光平有希)