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東インド史 ヴェネツィア版
解説
本書、『東インド史』ヴェネツィア版(イタリア語、1589年)は、イタリア人イエズス会士のジョヴァンニ・ピエトロ・マッフェイ(Giovanni Pietro Maffei, 1536?~1603)により著された、イエズス会布教史の一つです。本書前半部では、イエズス会士のアフリカから日本へ至る布教の軌跡が記され、後半部では、布教先でイエズス会士が認めた書簡40通(1549~1571年)が、「インド書簡選集」として紹介されています。
国際日本文化研究センターには、本ヴェネツィア版のほかに、同内容であるものの、完全に版が異なるフィレンツェ版(イタリア語、1589年)も収蔵されています。両者の相違点として、ヴェネツィアは丁付、フィレンツェ版がページ付といった点が挙げられます。マッフェイの生い立ち、『東インド史』の出版に至る経緯、日本関連記述については、フィレンツェ版の解説文で詳述しておりますので、興味のある方は、下記リンクから併せてご覧ください。
https://kutsukake.nichibun.ac.jp/obunsiryo/book/000676577/
〈『東インド史』ヴェネツィア版の概要〉
『東インド史』は、イエズス会の海外布教の軌跡に則りつつ、フランシスコ・ザビエルの布教にまつわる事績を中心に取り上げたイエズス会布教史です。アフリカ、インド、東南アジア、日本での布教、新大陸での布教について紙面が割かれており、現地の文化、習慣、地誌といった視点も多彩に盛り込まれています。
本ヴェネツィア版は、416丁(フォリオ)から成り、前半部ではイエズス会士がアフリカから日本へと布教して巡った順に、各地でのエピソードが18章立て(1丁表~295丁表)で論じられています。
「インド書簡選集」と銘が打たれた後半部は、4章構成(259丁裏~416丁裏)となっており、イエズス会士たちが寄せた書簡等が40通(1549~1571年)紹介されています。その内実を見てきますと、日本について言及されている書簡は、実に36通にものぼり、「インド書簡選集」とは名ばかりに、「日本書簡選集」と言っても過言ではないものとなっています。このことからもイエズス会士たちが、取り立てて日本に対して関心を抱いていたことが見て取れます。
本書で取り上げられている日本関連イエズス会士書簡、とりわけ、日本キリスト教布教の最初期に活躍したイエズス会士ガスパール・ヴィレラ(Gaspar Vilela, 1525~1572)が認めた書簡(333丁表~337丁裏)では、祭りや習慣についての記述が多く残されています。ヴィレラが1562年8月17日に、堺からイエズス会本部に宛てた書簡では、多少の誤解とキリスト教的なバイアスが含まれるものの、祇園祭とお盆の様子が生き生きとした筆致で描かれています。ヴィレラによる、お盆と祇園祭についての記述の和訳は、下記に掲載しておりますので、興味のある方は下記リンクからご覧ください。
「イエズス会士が見た祇園祭」
(執筆者:小川仁)
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