激動の時代を駆け抜けたキリシタン女性たち     ②竹田アグネス

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ダニエッロ・バルトリ 『イエズス会の歴史: 日本編』トリノ、1825年刊(初版は1660年)
Daniello Bartoli. Dell’Istoria della Compagnia di Gesù Il Giappone. Torino, 1825.

本書の著者、ダニエッロ・バルトリ(1608-1685)は、イタリア、フェッラーラ出身のイエズス会士で、15歳でイエズス会に入会後、イタリア各地で哲学、修辞学等の人文学を学び、1671年からはイエズス会ローマ学院長に就いた一方、著述家としても名を馳せた人物である。文法、道徳神学、科学、修辞学、歴史書と様々な著作を世に出しており、本書もそうした著作の一つと言える。本書『イエズス会の歴史』はイエズス会士の書簡や報告書を参照しつつアジア編、中国編、日本編、イタリア編、イギリス編で構成されており、1653年から1673年にかけて著された大著である。本書でのアグネスについての言及は15ページに亘っており、所々に感情的な表現を交えつつもアグネスとその家族の殉教の様子が至って冷静に描かれている。クラセ『日本教会史』と類似している部分が多く、クラセがバルトリによるアグネスの記述を参照した可能性は否定できない。

(執筆:小川仁)