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アルフォンソ・ヴァラーノ『悲劇 日本の殉教者アグネス』パルマ、1783年刊
アルフォンソ・ヴァラーノ『悲劇 日本の殉教者アグネス』パルマ、1783年刊
Alfonso Varano. Agnese martire del Giappone. Tragedia Parma, 1783.
『悲劇 日本の殉教者アグネス』は、フェッラーラ出身の著述家アルフォンソ・ヴァラーノ(1705-1788)により著され、教皇ピウス6世(1717-1799)にも献呈されている戯曲である。ヴァラーノは、文化政策に注力していた神聖ローマ帝国皇帝ヨーゼフ2世(1741-1790)の式部官を務めていた人物である。本書は、献辞、読者への辞、クラセの『日本教会史』を要約した日本概説、本編(6幕)といった構成となっており、執筆の際にはクラセのアグネスに関する記述を戯曲化した可能性が極めて濃厚である。本編はアグネスを中心とする10人の登場人物の対話によって展開され、今際の際でもなお、アグネスの周囲に示す慈愛に満ちた凛とした態度が如実に表現されている。エミリオ・マンフレディ(1745-1801)により描かれた本書口絵からは、天を仰ぎつつ死に動じないアグネスの姿を窺い知ることができる。そのために、他に著わされた報告書や歴史書よりも、直接的に読者に訴えかける構成ともいえる。
(執筆:小川仁)