欧文史料に見る大阪の陣

展示品<10>

【第二部】 ヨーロッパで語られた大坂の陣

 第一部で展示されている大坂の陣関連情報を含むオランダ商館員達の書簡は平戸オランダ商館長のところで留め置かれていたが、大坂の陣関連情報は、時間差はありながら、他の経路でヨーロッパまで伝わった。その経路は二通りあった。

 経路の一つはイエズス会士の報告書を通じてである。時の政治的状況や戦いの経緯についての詳細な説明がイエズス会士の書簡集や日本におけるキリスト教布教史を題材とした歴史書の中に掲載され、まずカトリック世界に普及した。その後、これらの歴史書の情報がオランダやドイツで出版された歴史書にも転写され、プロテスタント世界においても流布した。

 もう一つの経路はオランダやイギリスの東インド会社経由である。東インド会社文書の編纂・出版によって、当時の商館員達が見聞した情報の一部がヨーロッパの読者に届いた。また、日本側史料に基づく大坂の陣についての情報としては、オランダ商館に勤めた知識人ケンペルによる日本関連著作の翻訳によってヨーロッパに伝わった。