展示品<7>
5. マテイス・テン・ブルッケより平戸オランダ商館長宛書簡、室津、1615年5月10日付
〔慶長20年4月23日〕ハーグ国立文書館所蔵(NFJ 276, fos. 15v-17r)
〔和訳〕
拝啓 先月24日にそちら〔平戸〕から出発した後、牛窓を通ったところ、そこに投錨していた平戸の小型船〔の船員達〕が、上〔大坂〕では完全に戦争になっていて、多くの混乱があると我々に叫び、渡航を取りやめるように忠告していた。貴殿は以前からご承知であろうが、堺はすでに全焼している、あるいは、もうすぐ焼き討ちされるとの噂が広がっていた。《中略》
〔京都にて〕
というのも、将軍が大坂に来るためにすでに出発していることは確かな情報として出回っている。毎日、多くの大名や兵士が当地に到着し、彼等は伏見と大坂の間で宿泊している。そのため、京都の人々は、焼き討ちに遭う恐れが無くなっている。というのも、これまでそれがひどく恐れられており、多くの荷物が安全な場所に持ち去られていた。《後略》
〔解説〕
本書簡では、オランダ商館員テン・ブルッケが牛窓に着いた時に平戸の人から夏の陣が開戦したことを知らされる臨場感のある場面が叙述されている。牛窓から尼崎経由で京都へ行ったブルックは、そこから再び兵庫へ戻っているが、本書簡には当時の京都の様子も記録され、不穏な状況下での民衆の恐れや今後状況が安定するであろうとの安堵が描写されている。