欧文史料に見る大阪の陣

展示品<15>

5. クラッセ『日本西教史』フランス語版、1691年刊
Jean Crasset: Histoire de l’eglise du Japon. Paris, 1691.

『日本西教史』を著したジャン・クラッセは、フランスを中心に説教師として活躍し、厳格な立場に立った宗教書を多く残したイエズス会士である。本書は1549年のフランシスコ・ザビエルによるキリスト教日本開教から、1650年に至るまでの日本におけるキリスト教の出来事が通史としてまとめられている。

大坂の陣についてはイエズス会士の報告書をもとに8ページにわたり詳細に記述されている。方広寺鐘銘事件等、様々な策を弄して豊臣家を滅ぼそうとする家康と、それを巧みに回避する若き秀頼の駆け引き、開戦前に徳川方に寝返った豊臣家家老、片桐且元によるスパイ工作活動、本書で軍神として評価されている真田幸村の活躍、大坂に居合わせたイエズス会士2名が命からがら逃げ延びる様子などが描かれている。秀頼の最期については、その詳細は定かではないとされているものの、他殺説や、一大名のもとに母と妻とともに逃げ延びたとする説が紹介されている。